ゴルフのアメリカ女子ツアーのクラフトナビスコ選手権で、19歳のレキシー・トンプソンが優勝しました。
新たなスターの誕生ですが、女子ゴルフはアメリカではもう一つ人気がないようです。
優勝賞金もアメリカ男子PGAツアーでは一般に100万ドルを超えるのに対し、女子では20万ドル程度で日本のLPGAツアーとそれほど大きな開きはありません。
考えてみると女子のプロスポーツは世界的に見ても男子に比べると盛んではありません。それはアメリカでも同様です。
日本の女子選手がアメリカのメジャー大会で優勝までは届かないまでも、トップ10に入ることもそれほど珍しくないことを考えると、ゴルフのレベル自体それほど高くないのかもしれません。
人気が高くなれば、注目度も上がり賞金総額も上がってくるのでしょうが、アメリカ人スター選手も思ったより知名度が低いのでしょう。
ポーラ・クリーマーやモーガン・プレッセルなどはメジャー大会を制し、美人ゴルファーで人気も高いと思われますが、国民的スターとはなっていないのが現実です。アメリカ人が勝利しても、それほど盛り上がっていないのに、近年は韓国勢が強く、人気衰退の原因になっているようです。
今回アメリカ人でもある19歳の若いトンプソンが優勝したことでゴルフ人気回復のきっかけになるかもしれませんね。
メジャーで米ホープ対決 女子ツアーに希望の光
女子ゴルフの今季メジャー初戦、クラフト・ナビスコ選手権は、レキシー・トンプソンとミシェル・ウィー(ともに米国)が最終日最終組で激突する新旧「天才少女」対決が実現。
女子版マスターズと呼ばれる華やかな大会で、19歳のトンプソンがメジャー史上2番目の年少チャンピオンに輝いて幕を閉じた。
優勝を決め池に飛び込んで喜ぶトンプソン(中央)=共同
■攻めの姿勢貫き、「天才少女」対決制す
18番脇の池「ポピーポンド」に飛び込む恒例の勝者のダイブは、トンプソンが幼い頃から夢見たシーンだった。
両親やキャディーとともに満面の笑みで水しぶきを上げ、トンプソンは「もっと飛び込み方を考えておけばよかったわ。ちゃんと深さのあるところまで跳ぶことで精いっぱい。名付けると? “キャノンボール(大砲)スタイル”です」と声を弾ませた。
最終日はウィーと並んで首位からスタート。出だしの1番でバーディー奪取に成功し、「あれが大きかった。ティーグラウンドではすごく緊張したけれど、1ホール目でバーディーがきて落ち着きました」。
その後は3メートル前後のパットが面白いように決まる。前半だけで4バーディーを奪うと、ウィーに最大5打差をつけ、つけいる隙を与えなかった。本人は「9番でリーダーボードを見たのが最後でバックナインはまったくボードを見ていなかった」のだとか。
クラフト・ナビスコ選手権で優勝、メジャー史上2番目の年少チャンピオンに輝いたトンプソン=共同
追いかけるウィーがフェアウエーウッドで刻むのを横目に、攻めの姿勢を貫きドライバーを持ち続けた。後半はバーディーこそなかったものの、危なげないプレーで着々とパーを積み重ねる。縮まらない差にじれたウィーは17番でボギーをたたいて万事休す。3打の大差で逃げ切った。
■ツアーには願ってもない2人の対決に
圧巻の横綱相撲に「レキシーがすごすぎて追いつけなかった」と5歳年下のチャンピオンをたたえたウィー。一昨年、パットの不調で賞金ランキング64位まで落ち込んだ元祖天才少女の復調も今回のうれしいニュースの一つだった。
身長はともに180センチ超で男子並み。270ヤードをゆうに飛ばす、見栄えのする大型プレーヤー同士がメジャーの舞台で優勝争いを演じた。米国勢スターの不足に悩み、国内スポンサーの確保もままならないまま、グローバル化を“免罪符”にアジアに市場を広げざるを得なかった米女子ツアー。
米国復権を目指すツアーにとって、このホープ2人の直接対決は願ってもない出来事だった。
トンプソンがキャノンボールダイブを決めた光景を誰よりも感慨深く見つめたのは、マイク・ワン米女子ゴルフ協会(LPGA)コミッショナーだったかもしれない。
優勝を決め同組のウィー(右)と抱き合うトンプソン=共同
■ゴルフ専門誌の表紙から女子プロ消え
折しも米ゴルフ専門誌最大手、ゴルフダイジェスト誌がメジャー開催週に発売した号で表紙を飾ったのは、プロ選手でもゴルファーでもないモデルのポリーナ・グレツキーさんだった。
グレツキーの父ウェイン氏は北米プロアイスホッケー、NHLの元大スターで、本人は米男子ツアーで活躍するダスティン・ジョンソン(米国)の婚約者。
ゴルフにゆかりがないわけではないが、表紙のいでたちはセクシーなブラトップとボディーコンシャスなスリムなパンツで露出度が高い。
これに敏感に反応したのがワン氏だ。「女子ゴルフ界にはここ数年、数々の偉業を成し遂げた選手たちがいる。朴仁妃(韓国)は昨年メジャー3連勝を達成し、2年前にはステーシー・ルイスが米国勢として18年ぶりに年間最優秀選手賞に輝いている。
他にもリディア・コ(ニュージーランド)が歴史的な勝利を挙げるなど、取り上げるべき逸材はたくさんいるのに同誌の表紙を飾るには値しないとでもいうのだろうか?
彼女たちを差し置いて挑発的なポーズをとるモデルを表紙に起用する同誌の価値観は、どこかゴルフ界の常識を逸脱している」と、クラフト・ナビスコ選手権の直前に一雑誌を名指しで非難するコメントを発表したのだ。
3打差の2位と健闘したウィー=AP
■今回勝負、人気回復の起爆剤になるか
ゴルフダイジェスト誌は、2008年に当時世界ナンバーワンのロレーナ・オチョア(メキシコ)を起用して以来、米女子ツアー選手を表紙に使っていない。
現在世界ランク3位のルイスも「いくら頑張っても私たちはゴルファーとして正当な評価を受けられない。がっかりです。ゴルフダイジェスト誌も本を売らなければならないのでしょうけれど、女子プロにも少しは敬意を表してもらいたい」と訴えた。
しかし、トンプソンを中心にウィーやルイス、ポーラ・クリーマー(米国)といった選手たちが週替わりで活躍すれば、彼女たちを取り巻く環境は大きく変わるはずだ。セレブ扱いされる男子プロと比べると女子プロの知名度は驚くほど低い。クリーマーでさえ「フルネームでサインしないと名前を覚えてもらえない」と嘆くほど。
10年前、不毛といわれた日本女子ツアーで宮里藍が大ブームを巻き起こしたように、スターの存在が山を動かすこともある。今回のトンプソンとウィーの名勝負が米女子ツアー人気回復の起爆剤になればよいのだが……。
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO69552190Y4A400C1000000/?dg=1